みなさま、こんにちは(^^♪
先日、テレビを見ていましたら北九州小倉の「合馬茶屋」のタケノコ料理を、番組の突撃隊が食べていました。
今の時期しか食べられないとのことで、思い切って行ってきました。
ちょうど、この時期に北九州私立美術館で「足立美術館蔵 横山大観展」が開催されており、ファンなのでラッキーと思い、出掛けました。
初めてなので、少し調べて予備知識を得てから向かいました。
「北九州市立美術館」とは、どんなところですか?
「北九州市立美術館」は、1974年ランドマークとして、市のほぼ中心地の丘の上に竣工しました。
磯崎新が、カテドラル(聖堂)をイメージして設計し、その外観から「丘の上の双眼鏡」と愛称されています。
コレクションは、ルノワール、ドガ、モネなどの印象派、浮世絵、版画などを中心とする近現代アート8,000点を、収集・保存し展示しています。
2024年、開館50周年を記念して「足立美術館所蔵 横山大観展」を開催します。
本展では、横山大観の代表作「紅葉」をはじめ50点を展示し、巨匠・大観の初期から晩年の作品を鑑賞します。
「足立美術館」とは、どんなところですか?
足立美術館は、島根県安来市にある、近現代の日本画を中心とした庭園で有名な美術館です。
横山大観の、120点におよぶコレクションは日本一で、別名「大観美術館」と言う人もいます。
地元出身の実業家・足立全康が1970年、71歳のときに創設しました。
彼は裸一貫で事業を起こし、大コレクション蒐集への情熱は逸話が残り、幻の名画と言われる「紅葉」、「雨霽る」「海潮四題・夏」を含む「北沢コレクション」を1979年に入手した際の武勇談は特に有名です。
足立美術館の、広大な日本庭園は5万坪に及び、「庭園もまた一幅の絵画である」との全康の言葉が実現され、国の内外ともに高い評価を得ています。
米国の有名専門誌の「日本庭園ランキング」では、初回の2003年から「連続日本一」に選出されています。
「横山大観」さんとは、どんな方ですか?
横山大観は、明治元年に茨城県に生誕し、昭和33年に死没した近代日本画壇の巨匠です。
東京美術学校第一期生として、岡倉天心を師と仰ぎ薫陶を受けます。
明治31年、天心指導のもと日本美術院の創立に参加し、新しい日本画の創造に邁進し後継者となります。
今日「朦朧体」と呼ばれる、境目のない独特の没線描法を確立し、西洋画の鮮明な色彩が琳派と共通すると唱え琳派ブームを起こしました。
大正3年に美術院を再興すると、以後「院展」を中心に数々の名作を発表します。
昭和12年には第1回文化勲章を受章し、明治・大正・昭和と日本画壇をリードし続け、昭和33年に東京の自宅にて89歳で永眠しました。
小倉駅から北九州市立美術館に向かう(体験談)
宿泊ホテルに近い小倉駅から北九州美術館までは、バスも出ているようですが、分かり易いJR電車と、タクシーで行くことにしました。
小倉駅(9:30、5番線発)から枝光駅(9:40着)まで、JR電車(9km、10分、230円)で行きました。
枝光駅から美術館までタクシー(2,4km、7分、990円)で行きました。
タクシー降り場から、エスカレーターの入り口まで歩きました。
高い丘の上にあり、はるか向こうに玄界灘が見えます。
工場からモクモクと白い煙が上がっています。
工業地帯の北九州ならではの風景でしょうか。
手前には、住宅地が立ち並び、新緑の山々の緑が映えています。
エスカレーターを登り切り、玄関に着きました。
高台にあるため、風が強いので二重の自動ドアの玄関を入りました。
広いエントランスホールがあり、右側にチケット購入場所があります。
2人分、3,400円で購入しました。
大きな「紅葉」の看板のある方に歩き、写真を撮り、入場しました。
明治時代の作品
展覧会は、大観の「明治時代」「大正時代」「昭和時代」に分けて展示してありました。
私は40年ほど前の地方での展覧会に来たことがあります。
また、足立美術館に数回行ったことがあります。
「無我」1897(明治30)年(29歳)出世作
一番最初に「無我」が展示されており、ハッと再会を懐かしく思いました。
先回の地方展でも、一番に展示されていました。
29歳という青年大観の幼年時代を思わせる出世作で、大観の「初心忘れず」の思いが伝わって来ました。
誕生仏を思わせる豊かな頬の童子が、無邪気な子どもが不安な面持ちで、川辺をよちよちと歩くようすが大観を連想させます。
禅の無我の悟りの境地を、無心の童子によって表現した大観の純粋さに心打たれました。
この心が、師である岡倉天心と共に守旧派と対立しながらも、新しい日本画壇の道を切り開いて行ったのだと感じました。
「曳船」1901(明治34)年(33歳)朦朧体の極致作
「曳船」は明治34年に発表されました。
大観が「世間から悪魔のように嫌われた」と言った朦朧体は明治31〜33年に完結したと言われます。
3人の水夫が、岩石の坂道、重い船、滝飛沫で見えない激流の中を一本の綱で引いて行きます。
横山大観、下村観山、菱田春草の3人が水夫となり、岡倉天心の理想を求めて、現実の想像を絶する対立の環境の中で、新しい芸術を創造する苦労を、勝手に絵から感じ取りました。
大観の不屈の精神と、日本的叙情溢れる、朦朧体の極致たる一作に感動しました。
大正時代の作品
観山は29歳で滝沢文子と結婚しましたが、観山34歳の時に文子が病没しました。
観山38歳の時、遠藤直子と再婚しましたが、観山45歳の1月に直子が病没しました。
そして12月に関谷静子と再婚しました。
この頃、親友の菱田春草を亡くし、妻直子を亡くし、師天心を亡くし、一人娘も亡くしました。
「緑雨」1914(大正3)年(46歳)臥薪嘗胆
この頃に描かれた「緑雨」は、新緑の中で雨宿りするカササギのつがいが、ようやく雨はあがったけれど、尾は雨に濡れて重く垂れてまだ飛び立てない、その雨あがりの一瞬を捉えた和やかな一幅です。
大観が不幸が続く中を、師の遺志を継ごうと再婚して、臥薪嘗胆の中を、新しい道に飛び立とうとする気持ちを込めて、描いたのではないかと想像しました。
「山窓無月」1919(大正8)年(51歳)墨色彩一体の気品
大観は、第4回〜6回と院展に多くの作品を出展します。
「山窓無月」は第6回の出品と思われます。
この頃に、帝国美術院の会員の内命がありますが辞退します。
「山窓無月」は、月のない夜に、茅屋で明かりを灯し、高士が黙々と文を読んでいます。
耳には、さやけき竹のざわめきと、小滝の音が響きます。
竹林の墨ぼかしと明かりの淡彩が、寂寥とした夜の雰囲気と、生きた高士の吐息を感じさせます。
大観の高い志が、世のざわめきに惑わされず、ひたすら精進する様を描いているのでしょうか。
墨と色彩が一体となった気韻高い一作に、大観の特徴が発露されています。
大正時代の大観は、絢爛華麗な色彩画を描いて新光琳派と称されていました。
また水墨画にも意欲を見せ、気韻高い作品を次々と創作して行きます。
「気韻生動(きいんせいどう)」とは、気高い風格や気品があり、生き生きとした生命感が溢れることを、岡倉天心が画家に求めた境地です。
昭和時代の作品
この時期、大観は順調に展覧会に出品が続き、美術使節としてイタリアに夫人と共に渡航する。
宮中の画業や調度作成も行い、帝室技芸員に命ぜられます。
「紅葉」1931(昭和6)年(63歳)気韻生動の最高傑作
その頃に描かれた「紅葉」は、第18回院展に出品します。
紅橙黄色の紅葉に、古木へのたらしこみ、群青と銀波の流水、白金泥の川霧と川飛沫、苔むす岩、深秋の渓谷の清冽な自然を描き出しています。
最も絢爛豪華な一作ですが、単なる装飾画に終わりません。
もみじの葉を散らしてセキレイが飛び立つ様は、張り詰めた生命力を吹き込んでいる「気韻生動」の最高傑作だと感動しました。
「雨霽る」(あめはる)1940(昭和15)年(72歳)惚れ惚れと眺める
当時は、大戦の近づく緊迫した世界情勢の中でありました。
水戸出身の大観は、尊王精神は必然的に尊大でした。
「紀元2600年奉祝記念展覧会」に「山に因む10題」「海に因む10題」の20題を出品します。
前者に当たる「雨霽る」は、大観の水墨画の中でも五指に入る名作と言われます。
雨後の霧雲が晴れ上がっていく山並みの流動感が見事に表現され、その彼方には富士山が気高くそびえ、山間には社寺があり人の息遣いが感じられます。
大観は「日本画の究極は気韻生動に帰着する」と述べています。
足立全康は、この絵が大変気に入り、複製を額に入れて、毎日惚れ惚れと眺めていたそうです。
後年、入手する縁があり、その武勇談は有名になり“思いは実現する”を証明しました。
北九州美術館「足立美術館蔵 横山大観展」ご案内
まとめ
北九州美術館の「足立美術館蔵 横山大観展」を観覧するために、少し調べて予備知識を得てから向かいました。
現代日本画家の巨匠「横山大観」展を観て、高明な芸術家が短命であるのに、89歳で「不二」を描いて絶筆となる旺盛な創作力に、岡倉天心師の理想である気高く生き生きと生命力漲る「気韻生動」の人生を感じました。
妻を2人も亡くし、弟、妹、娘、師、親友を亡くした波瀾万丈の人生です。
尊敬する師が追放されると、志を共にして自身も友と飛び出て跡を継ぎ、師の理想である「気韻生動」を果たします。
明治に外国の芸術が流入する中、世界に通用する芸術を日本画に求めて、命を賭けて歩まれる人生に感動しました。
人生100年時代と言われますが、残された人生を大観先生の「気韻生動」に学び、高い気品や風格を求めて、血の温かさや息づかいを感じられる生き方を求めたいと思いました。
昨年は、上野の森美術館でモネの絵のみ60点鑑賞しました。
今回は大観の絵を一堂に50点鑑賞し、心から満足しました。
天心先生、横山大観先生、足立全康翁、足立美術館、北九州市立美術館の関係者の皆さま、ありがとうございました。
See you(^^♪
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